君の膵臓をたべたい/住野よる 2015年 評価:2
膵臓を侵されて余命宣告を受けている明るくて可愛いクラスの人気者高校生の桜良が、唯一その秘密を打ち明けているのは同じ図書委員でおとなしく一人でいることが好きな“僕”。二人の中は親密になっていくが、桜良は事故で死亡。残された日記帳には家族や“僕”への思いが綴られていた。
余命の限られた若くて明るい女子高生が主人公というベタな設定だけで、泣かせる物語というのは見え見え。そしてその内容も、現代人に受けるような作られ方がしており、ストーリーが想定を外れることは全くない。
まず最初から、そんな当意即妙なやりとりをする人間がいるかよ?というような会話を、人と接することが嫌いで一人で生きることを選んできた主人公が口にするのが全く現実的ではない(私は途中で、この主人公は死んでいて実在しないという展開ではないか?と勘繰ったほど)。それとそんな女子高生と、オタク系の主人公、桜良の親友であるツンデレ系の恭子という、ありきたりの登場人物像が、非日常的なやり取りの結果として設定されているため、まったく人間味がない。ただ単に今受けそうな登場人物を、泣けるストーリー展開に絡ませれば、売れるでしょ?という、ライトノベル感満載で、とても文学といえるものではない。
一番ダメなのは、桜良が死んでからの日記公開以降で、読む人に全く想像させる暇も与ず、ほら、これで感動しろ!とでもいうような押しつけがましい文章の溢れかえるような畳みかけで、正直、その感動の押し売りがうざすぎる。