ツナグ/辻村深月 2010年 評価:3


 死んだ人と生きている人を、各々の人生の中で一度だけ合わせることのできる使者ツナグ。高校生である彼のもとを訪れる4人の依頼人とそれぞれのケースと、彼自身の物語、計5編の短編集である。2012年には映画化もされた。

 非現実的な反則技のその設定なら泣かせる物語はいくらでも書けるだろうと、初めは眉唾物と意識して読み始めたが、「凍りのくじら」で誠実な文章を書くと感じていたこの作家は単なるお涙頂戴ものを書くわけではなかった。すべてのケースが死者と生きている人間は会ってよかったという結果ではない。生きている側にはただ会いたいという以上の思惑があり、それが物語を天外な方向に進ませることにもなる。特に3話目の女子高校生の話が秀逸であり、また最終の5話目はツナグを祖母から引き継ぐことになった高校生自身の話でもあり、上手い具合にバランスの取れた作品である。

 非常に面白く読み進められ、卑怯な設定は引っかかるが評価は4と思っていたが、最終話のストーリーが、おいおい小学1,2年生がそんなことまで覚えてないだろうよ、という解せない終結を迎えるのが減点となる。