奔馬 豊饒の海(二)/三島由紀夫 1969年 評価:3
大正に時代が移り、裁判所の判事となっている38歳の本多は、上司の代わりに出席した剣道の大会で、かつて親友だった清顕付けの書生であった飯沼の息子である勲に出会う。清顕の残した「又、会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」との言葉通りの風景の中で勲を認めたこと、勲の脇腹に、清顕の脇腹にも同じくあった三つの黒子があることなどから、勲が清顕の生まれ変わりであることを確信する。明治9年、熊本で起こった神風連の乱の精神に心酔する勲は大正の時代において同じく自己犠牲の精神で国を救おうとするが、企ては未然で失敗する。
豊饒の海(一)の硬質な文体を継続した文章は、正直、すごいとは思いつつも読むのがつらくもなってくる。また、終盤に向かって話は展開していくが、前半は新風連の伝記(三島の創作)を入れたり、三島自身の自決への思いが勲の自刃の精神にも投影されているために、かなりを広範な精神的な部分の描写に割いており、三島の研究材料としては意味深くとも、小説としては面白いとは言えない。
相も変わらずすごい文章だが、(一)に続けて読むと正直評価2でもいいくらいの印象ではあるが、やはり本作単体としてみればそういう評価にするにはさすがに文学的な完成度が高すぎる。