三四郎/夏目漱石 1909年 評価:3


 九州から大学進学のため上京した三四郎。真面目に勉強に勤しむつもりだったが、東京の学生生活、周囲の怠惰というか勉強以外に勢力を注いでいる友人・知人たちの中で三四郎も徐々にその生活に感化されていく。そんな中、美しく都会的な女性に惹かれてみたりもするのだが。

 社会人になって漱石作品を読むのは4作目。三部作をなす「それから」の前段に置かれる作品で、その文章は、時代に前後はあるが、三島由紀夫の硬質に川端康成の奔放さと美しさをまぶしたようなものである。文章には感嘆するしかないのだが、やはり今と大きく異なる大学生活の細かな生活描写は私が感じられるものとは異なるし、ストーリー的に少々退屈感を感じざるを得ないため、「それから」ほどの評価点はつけられないというところ。まぁ、まぎれもない文豪ではあるけれども。