熊と踊れ/アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ 2014年 評価:4


 レオ、フェリックス、ヴィンセントの三兄弟とレオの幼馴染ヤスペルは、軍の倉庫から2箇隊分の武器を盗み出し、レオの周到な計画のもと、銀行強盗を繰り返す。しかしもともと素人であった彼らのうちフェリックスとヴィンセントは、一歩間違えば殺人者となってしまう状況に嫌気をさし、仲間を抜ける。その代わりレオが仲間に迎えたのは、かつて三兄弟が忌み憎んでいた、飲んだくれで母親への暴力がすさまじかった父親のイヴァンであった。

 実際にスウェーデンで起こった事件をモデルにした北欧クライム・サスペンス。登場人物が上記4名に兄弟の両親、彼らを追う警部とそのかつての恋人で鑑識官と、主だった登場人物が絞られていながら1000ページを超える長編であるため、各人物像の掘り下げが実にしっかりしている。

 なぜ彼らが銀行強盗になるに至ったか、誰も殺してはいないが、銀行強盗に遭遇した一般人が負う心の傷、犯罪者心理等の掘り下げもなかなかのもので、ありきたりのサスペンスとは一線を画す良作である。ただ、丁寧に描いている割に、登場人物に魅力を感じられないところがやや残念。