日の名残り/カズオ・イシグロ 1989年 評価:3


 第二次世界大戦から10年後。イギリスの由緒あるダーリントン・ホールに長年勤め、名執事として名高いスティーブンスは、新しい主人であるアメリカ人から休暇を取るよう勧められ、1週間の国内旅行に旅立つ。自分の住む国をよく知ることと、かつて同じ屋敷で女中頭としてともにダーリントン卿に仕えたミス・ケントンを訪ねることを目的にした旅程で、スティーブンスはこれまでの執事人生を振り返る。

 主人に忠義を尽くすという点で、日本における忠誠心篤い侍と同じ精神を持ったイギリスの執事。違いといえば侍は主人が悪い人間だとしても耐え忍んだり、または進言したりするのに対し、執事は、主人のすることには全く関与しないというところか。同じく強い精神力が必要とされるが、日本人として生きてきた私にしてみれば侍の生き方のほうがしっくりくるし感動も深い。奥深い内容の小説だが、イギリス人が感じるであろう感慨は知る由もない。