幻の女/ウイリアム・アイリッシュ 1942年 評価:1


 倦怠期にある妻と喧嘩して外に飛び出したスコットは、偶然飛び込んだバーで一人で飲んでいた女性を誘って舞台を見てから家に戻ったが、そこにあったのは妻の刺殺体。自分が犯人でないことはその女性と一緒にいたことを証言してくれる人がいればよかったのだが、みな、スコットは一人だったと証言する。一体どういうことなのか、死刑が宣告されたスコットに残された時間は刻一刻と無くなっていく。

 日本では最近でも海外ベストミステリーの上位に来る、人気のある作品なのだが、ストーリーがてんでなってない。家に戻ったスコットはすぐに犯人として捕まるのだが、その理由が、殺された妻がしていた壊れて止まった腕時計の時間(勝手に動かすことも可能なのに)にスコットがどこにいたかを証明できないことだけなのである。要は証明してくれる女性およびその女性と一緒にいたことを見ているはずの人間が何も証言しないという基本プロットがあって、話をそれに合わせて無理やり作っている感満載なのだ。真犯人も無理やりだし、証人たちが偶然にも死んでしまうような展開、犯人を最後まで読者に悟らせないような記載内容(半分嘘を書いているようなもので、この辺りはアガサ・クリスティーと全く異なる)も、あざとくて頭にくる。なんでこんな作品が、日本でのみらしいが評価されているのか全くわからない。