怒りの葡萄/スタインベック 1939年 評価:4
1930年代、深刻化したダストボウル(砂嵐)による農産物の不作と大干ばつ、そして大規模資本主義農業の進展により、アメリカ中西部では流民となる農民が続出。ジョード一家もその中の一家族。カリフォルニア州を目指した出発の際に、酒場での殺人により服役していた長男トムが仮出所で戻ってくる。頼りがいのあるトム、自動車整備の上手い女ったらしの次男アル、妊娠中の長女ローザシャーンなど13人は1台のおんぼろトラックに乗り、肥沃なカリフォルニアでの豊かな生活を夢見るが、厳しい現実が待っていた。
スタインベックは本作によりノーベル文学賞を受賞。また現実を基にしたアメリカで起こっている悲劇をあからさまに書いた内容は大きな反響を巻き起こした。ヘンリー・フォンダ主演で映画化もされ、アカデミー監督賞を受賞。ヘンリー・フォンダはまさにトムにうってつけの役者であり、トム・ジョードは当たり役となった。
現実に起こっている、アメリカの小作農民の実情が事細かに表現されているとともに、ジョード一家に起こる悲劇にも容赦がない厳しい内容の中で、労働組合結成の動きが出てきたり、一家の中でどんな時でも強いのは女であること、人生はどんな時でも希望を持ち、決してあきらめてはいけないことをじっくりと骨太に描き切る重厚な作品。好き嫌いはあると思うが、すごい作品であることは間違いない。