宝石泥棒/山田正紀 1980年 評価:3
現代から数千年、いや数万年後の地球だろうか。「甲虫の戦士」であるジローはいとこに一目ぼれする。その恋を成就するためには、かつては人々の宝石であった”月”を取り戻すことが必要と言う。ジローは「狂人」のチャクラと女呪術師のザルアーとともに”月”の手掛かりを探しに“空なる螺旋”に向かう。日本のSF選では必ず上位に来る作品である。
熱帯雨林や砂漠の土地で、巨大化した植物や生き物と戦うという構図は「地球の長い午後」(1961)に似ているし、人と人とが殺し合いを始めた愚かな人間は、地球外生物により支配され、見張られているという世界観は「幼年期の終わり」(1953)と似ており、それ以降の発刊である本作に新鮮味はない。
数人の特徴ある登場人物がいるが、宿命的な使命を帯びている割にはなんとなく俗世間的であるし、話の展開もご都合主義的で甘い感じもあっていまいち入り込めない。ライトノベルっぽい雰囲気もある。確かに日本の中では革新的な内容であったのかもしれないが、世界的にみると目新しくもない内容で、平均的な出来と評価。