赤と黒/スタンダール 1830年 評価:3


 1800年代初頭にきこりの子として生まれたが、その美貌と明晰な頭脳で、富裕層を憎しみながらも貴族の夫人や娘の愛を勝ち取り、聖職者として出世をもくろむジュリヤンの一代記。

 大学時代に読んだ頃、その野心あふれる内容にかなり影響を受けたと思われる。ジュリヤンの「~しなければならない」という自己に対する義務的な考え方というのは、かなり私ももっていたもので、それはこの本の影響が少なからずあると考えられるのである。一方、今読むと、ジュリヤンは恋愛に対する策略と出世欲があったのだが、色々と自分で考え過ぎてしまい、結局は自身への義務を守れずに、多くの弱みを見せていたことに気づく。そこが、かえってジュリヤンを魅力ある人物にもしている。

 ただし、やはり200年近くも前の貴族層の生活をベースにしているので、文化や習慣がどうも現代と相容れず、映画でいえばコスチュームもののような、全体的に現実感のない印象となってしまうのは致し方ないか。