夏の黄昏/カーソン・マッカラーズ 1946年 評価:3
南部の片田舎に住む12歳の少女フランキーは同年代の少女の和にも入れず、いつも、召使の中年の黒人女性と従兄弟で6才のジョン・ヘンリと同じような時間を繰り返し過ごしていた。そんな平凡な日常に嫌気がさした彼女は、兄が結婚することを契機に、全く別の世界で生きていくことを夢見る。
本作の主人公は本人をモデルにしているということだが、普通の大人はとても考えつかない、愚の骨頂のような根拠もない自分勝手な夢を見るフランキーが何とも滑稽で、同感もできないのだが、12歳ぐらいの年齢のときはそんな感じだったかなぁとも思う。そんなハチャメチャであったであろうあの頃を思い起こさせ、ノスタルジーを感じさせる小説というのも、この年になるとなかなか稀有なもの。
マッカラーズは生涯で4つの長編しか残していない寡作家であるが、その芸術性は高く評価されている。話の筋はほんの数日間をメインにしていて、フランキーの広がっていく夢想以外には大したことは起こらないのだが、メインの3人の会話や初夏の匂い立つような季節感がヴィヴィットで特異であることは間違いない。