犯人に告ぐ/雫井脩介 2004年 評価:3
神奈川県で起こった児童誘拐事件は、誘拐児童が殺害されるという最悪の結末で終焉した。現場指揮責任者だった巻島はその記者会見で、マスコミの容赦ない追及にキレてしまい、栃木県に左遷。6年後、同じく神奈川県内で4件の連続児童殺害事件が起き、捜査が行き詰まる中、TVでの犯人への呼びかけを主とする劇場型捜査を行うに当たり、巻島は6年前の上司だった曾根に呼び戻され、捜査責任者を任命される。
話の展開は面白いし、興味を持ってどんどん読み進められるが、まず、作風としてはどこが秀でているというものはない。登場人物の心を深掘りするというところでは宮部みゆきに及ばないし(宮部はやりすぎだが)、警察の内情を描くというところでは横山秀夫に及ばない。作品として、面白く読める一冊という存在感のみが残る。
題名からして、警察VS連続殺人犯という話が想像されたが、それはベースではあっても決してメインではない。かなりの分量を割くのは、大学時代に好きだった、今はTVキャスターとなっている女性の気を惹くために捜査情報を漏らす巻島の上司の植草絡みのストーリー。そんなことあるかいな?という疑問が先に来るし、それより本筋を進めろよとイライラしてしまう。そして、実際の殺人犯は、偶然をきっかけに逮捕に至るという、唖然とするあっけら感。巻島の人間性も何か一定しないし、感動させようというセリフが自棄に唐突に出てくるのも違和感がある。この作品の幹となるものがブレちゃいないか?