ジェームズ・ディーン ある友情の証言/ウィリアム・バースト 1956年 評価:5
ジェームズ・ディーンが売れ始める前から共に暮らし、一緒に夢を追いかけながらも苦汁も共にした親友であり、後に劇作家・放送シナリオ作家となったW・バーストが、ジミーの交通事故死の翌年に書きあげた追悼本である。ちなみに本書に書かれているジミーや関係者の言葉は、後の様々なジミーに関する書籍で多く引用されており、記録本としても価値の高いものである。
ジミーの人気が伝説的になる前に書きあげたものであるとともに、最も近くで接しジミーを知り尽くした著者だからこそ、ジミーを俳優のみとしてやスキャンダルの対象として描いてはいない。偏屈で躁鬱気味で、とても繊細であるが、とてつもないガッツで夢を追いかけて、あっけなく逝ってしまった、一人の青年として、ジミーを回顧している。
私が大学生の時に図書館で借りて初めて読み、ジミーの、一人前の俳優となるためにどう生きるべきかという考えは、俳優を目指していた私にとってはスタニスラフスキー・メソッド自体よりも計り知れない影響を与えてくれた本であり、間違いなく今の私の芸術に対する造詣を形成してくれたのだ。若いころにはしょっちゅう読んでいたのでもう本もボロボロで、かつてはこの本を読んで、他の人の知っていることや芸術を貪欲に身につけていくための行動力を持つ勇気を何度も得てきたものだ。今久しぶりに読み返して感じたのは、まだまだ自分の好きなことに力を注ぐということも大事だが、何かを身につけるということよりも、今迄に蓄えた少ない知識を人に伝えることを考えて人と接する立ち位置になったのではないかということ。
また、子供のころに読み捨てていた「星の王子さま」を、この本によってジミーがとても大切にしていたことを知り、再読してみて素晴らしさに気づかせてくれた(それが後に「人間の土地」につながる)。いつまでも何かを得ることのできる、なにをおいても私が最も影響を受けた特別な本である。