鷲は舞い降りた/ジャック・ヒギンズ 1975年 評価:4
1943年暮れ。敗戦色が濃くなってきたドイツ軍は、イギリスのチャーチル首相がイギリスのとある田舎町で週末を過ごすという情報を、現地のスパイから入手。起死回生の一発を狙ってチャーチル首相を誘拐すべく、歴戦の落下傘部隊の猛者シュタイナ中佐などを現地に送り込む。果たしてドイツ軍の目論見は上手くいくのか。
半分は史実に基づいているというリアリティと、ドイツ側(実際にイギリスに乗り込んだ部隊、ドイツにいて指揮を取る秘密警察)とイギリス側(現地地域の軍隊、現地の警察、舞台となる村の住民)それぞれの場面をスピーディかつ個々人をビビットに描いていることで、良質の映画を見ているような魅力にあふれている。また、著者の作品の登場人物は全くの硬派で無駄のないハードボイルドであるので、キャラが立っているし男性的魅力を存分に感じさせる。
間違いなく戦争小説の、ハードボイルドの傑作だと思うが、ただ、ドイツ側とイギリス側双方の人物を丁寧に描いている(そして、それが本書を面白くしているのは事実なのだが)ことと、特に聞き慣れないドイツ人の名前の多出により、登場人物が覚えきれないし、途中で間違って認識していると気づくこともしばしばで、本当は作品の評価には全く関係はないはずだが、それでも評価5をつけづらいのは確かだ。