幼年期の終わり/アーサー・C・クラーク 1953年 評価:4
ある日、地球上の大都市すべての上空に、陸地のように巨大な宇宙戦艦が現れ、それらは地球上の科学を無視してその巨体を空に留めた。年月が経ち、オーヴァーロードと呼ばれた異星人は国連事務総長のみを通じて、地球人に命令を下す。うかがい知れる圧倒的な科学力の前に人類は無力感を感じ、その結果地球同士の争いはなくなったものの、創造力や芸術性は失われていく。果たしてオーヴァーロードの目的とは何か。地球人の運命はいかに。なお1989年に、その時の科学の進展具合等を鑑み第1章に大幅な改訂を行っている。SF傑作選では必ず顔を覗かせる傑作である。
さすがSFの巨匠である。地球の科学力からの想像を超える宇宙的生物、また全人類的な展開には感嘆するしかない。また、描かれるヴィジョンは鮮明で、ある意味現実的な想像も可能で、科学に対する含蓄の深さを感じさせる。地球的頭脳からは想像もできない現象の存在は、宇宙規模に考えれば当然ありうると私は思っているので、本作で描かれる地球の精神的征服の、理解不能な理由というのも、受け入れることができる。ただ、後半は少し起伏に乏しいかなというのと、やはり話の落ち着け方があまり好きになれないところがあるので、評価は5に届かない。