刺青・秘密/谷崎潤一郎 1918年 評価:3
1910年に発表された「刺青」から1918年発表の「母を恋いうる記」までの7編の短編集。「痴人の愛」で顕著なように、谷崎作品は今から100年の前の作品でありながら、その古さをあまり感じないのは、時代に因ってもあまり変貌しない男女間の性を、一種独特の艶めかしさで描いているからだろうと思う。
短編集だが、それぞれ密度が濃くて強烈な印象を残す。自伝的な作品である「異端者の悲しみ」では「痴人の愛」の主人公のような人間の弱さに辟易はしてしまうのだが、逆にそこまで赤裸々に弱さを描けるというのもすごいことだ。短編集であるが、その密度の濃さは特筆すべきものだろう。