精霊の守り人/上橋菜穂子 1996年 評価:4

 架空の国、新ヨゴ皇国。短槍使いの女用心棒バルサは、橋から川に落ちた皇子チャグムを救ったことをきっかけに、体に異変が起こったことにより、王から命を狙われているチャグムの用心棒を引き受けることになる。

 ライトノベルのように奇抜なストーリーで衆目を引いて、肝心の人物像が等閑という内容ではなく、海外でいえば「指輪物語」や「ハリー・ポッター」シリーズに当たる、古代日本を舞台にしたような、大人も十分楽しめるファンタジー作品。同じ場所、時間に2つの世界が存在しているという世界観、片方の側の世界の妖獣が、もう片方の世界に生きる少年に卵を産みつけるというストーリーも、それらの存在の丁寧でビビットな描写によって、上質のファンタジー映画を観ているような魅力がある。そしてなにより、登場人物たちが、人としての魅力にあふれていることが、本作および本作から始まった10作のシリーズが日本のファンタジーの一級品と評されている大きな要因だと思う。