檸檬/梶井基次郎 1932年 評価:2


 1924年から1931年の間に作者が残した20篇(そしてそれは31歳で早逝した作者の作品のほとんどを占める)からなる短編集。長らく肺を病んでいた自分自身をベースに置いた、ほとんどすべてが私小説的で実に内向的な作品が多い。

 作者の作品は特に同業者である文学者からの評価が高いが、面白いかと問われれば、正直面白くはない。確かに内に向かって微細に景色や生き物や自分自身を観察し、それを緻密に文章化している内容は個性的で、文学的には評価されるべきものなのかもしれないが、どれも根本的には同じような内容で、ストーリーや会話には惹かれるものもないし、全体的にネガティヴな雰囲気で覆われているのも、読んでいて気が滅入る。