針の眼/ケン・フォレット 78年 評価:3
1944年。敗戦への道を着実に歩んでいたドイツにとって、連合国軍のヨーロッパ大陸への侵攻場所を特定することは最重要課題であり、イギリスにスパイを送り込んでいたが、その多くが連合国側に寝返る始末。そんな中、ヒトラーが絶大な信頼を寄せる≪針≫という暗号名をもつフェイバーは、連合国側が、カレー上陸を装う欺瞞作戦を展開している証拠写真を撮る。フェイバーをその証拠写真を母国に届けるために、嵐の夜、Uボートの待つ北海へと船を出すが…
プロフェッショナルで冷酷なフェイバーを描く中盤まではなかなか面白い。しかし、難破した船から辿り着いた小さな島に住む、足が不自由な夫と冷めきった関係にある若妻と関係をもつあたりから、話がおかしくなってくる。最後はその女性が主人公になって、恐怖の対象となったフェイバーをやっつけるという、なんだかあり得ない展開になる。
硬派なスパイもの→アダルト・ロマンス→ホラーものという、一般受けしそうな材料を全てとりいれた結果、焦点の定まらない作品となっている。