斜陽/太宰治 1947年 評価:4
第二次世界大戦後、気品漂う母、その貴族の家庭で育ったかず子と直治の、貴族としてのプライドを捨て切れずに没落していく退廃的な姿と女の強さと男の弱さをも描いた作品。同様の内容の短編「おさん」も収められている。
言葉のやり取りにハッとさせられる表現力や、どこまでも男は弱く、子供っぽい所などは川端康成作品に似ているところがあるが、決定的に違うのは、主人公の女は最後に男を完全に切り捨てるところと、徹底的に人間の風景を描く点か。しかし、描かれる人間はどこまでも人間臭く、馬鹿正直でてらいがない。その中で交わされる言葉の数々に、人間の奥深さも浅ましさも感じられ、惹きつけられるのだ。退廃的な雰囲気を感じさせる文章は美しさは感じないが好きな部類で、私にとっては結構好きな作家かもしれない。