ゴルディアスの結び目/小松左京 1977年 評価:3


 精神を病んだ美少女の心に入り込むサイコ・ダイバーの話や、地球上の全生物の電子データをもって破滅した地球を飛び立った宇宙船の話など、4編からなる短編集。小松左京の作品というのは、科学的信憑性を必ず十分に記述するという特徴があり、ここに収録された4編すべてにもそれが言える。なので、短編と言えどどれも尋常ではない密度の濃さである。

 とにかく、溢れ出るイマジネーションと知識から裏付けされた科学的根拠を併せて、作者がもう自分の好きなように書きなぐったとでもいうような、奔放自在の作品群である。今の時代からすれば決して珍しい題材ではないかもしれないが、ストーリーの面白さだけでなく科学的に納得させようという姿勢を感じさせるのはこの作者独特の持ち味で、逆に、短編だからこそそれが少し煩い感じを受けてしまったのも事実。孤高の作品群だが、それほどは好きではないというのが落ち着きどころ。