野火/大岡昇平 1952年 評価:3
第二次世界大戦末期のフィリピン戦線。田村一等兵は喀血して病気と判断され、病院に赴くが、すぐに治癒と判断されと突き帰される。しかし食糧難の軍本部も受け入れられず、戦場をうろうろするうちに、米軍の爆撃により日本兵は次々に死んでいく。偶然にも生き延びた田村はただ空腹と戦うのみで、仲間の日本兵を”猿”と称して撃ち殺し食べている日本兵と行動を共にする。
私は1959年の市川崑監督の映画版を先に観ており、これが戦争の悲惨さを写実的に描いていて、インパクトが強い。原作となる本作は、小説の内容自体は衝撃的なものだが、戦争と神の存在を絡めて描いていて、田村の心情の描写が多く、また、書体が硬くて難解な表現や語彙が多いこともあり、流れが悪い。