黄昏の百合の骨/恩田陸 2004年 評価:3
祖母が事故死した古い洋館に、祖母の「その洋館で暮らすこと」という遺言により海外留学から一時帰還した高校2年の理瀬。その洋館で、祖母の結婚相手の男性の連れ子であった二人の中年女性姉妹と生活を共にすることになるのだが、百合の花のきつい匂いに包まれたその洋館で、奇怪な事件が起き始める。
高校生の理瀬とそれを取り巻く男女の友人、ミステリアスな熟年姉妹と従兄弟の稔と亘の兄弟。限られた登場人物だからこそ、それぞれの描かれ方が丁寧でキャラが立っていて分かりやすく、ストーリー展開も一昔前の海外ミステリーのような、現実感は薄いが雰囲気が抜群にあるという内容で、さくさくと面白く読み進めることができる。
理瀬はかなりミステリアスな高校生なのだが、本作中ではその全貌が明かされることはないし、ほとんど絡みのない人物が手紙の中だけに登場したりする。解説をみると、ある一連のシリーズの中の一つということで、それは理解したが、一作品としてみるとやはりそれはずるいでしょう、というのと、ラストのある意味できるだけ人を傷つけないという終わり方が甘っちょろく、あまりに現実感がないのが減点になるが、全体的に雰囲気があって面白い作品であることは間違いないだろう。