幸福な王子/オスカー・ワイルド 1891年 評価:2
1888年に発行された5編からなる短編童話集と、1891年発行の4編からなる2つめの短編童話集を合わせたもの。
童話集だけあって、善悪のはっきりした単純なストーリーである一方、決して簡単なハッピーエンドではない捻りも効いている。しかし、古いプロテスタントの家柄で育まれたキリスト教の考えに根付いているのか、自己犠牲の精神があまりに表面に出過ぎていて、それが果たして本当の人間の幸福か、と考えると首をひねらざるを得ないものが多い。例えば、最も有名な「幸福な王子」は、金箔で覆われた王子の像が、自身の眼に埋まっているサファイアやルビーを貧しい子供や青年に分け与える話なのだが、単純にあげたからと言って、もらった人が幸せになるとは全く限らない。そんなことは分かり切っていることで、子供に語る際にはなんとか言い包むことはできても、決して大人が読んでも感傷深いような童話集ではないと思う。