破獄/吉村昭 1983年 評価:2
1933年に仲間数人と強盗殺人を犯し1935年に青森刑務所に投獄されるも、翌年に脱獄、それ以降も秋田、網走、札幌刑務所に収監されては脱獄を繰り返し、昭和の脱獄王と呼ばれた実在の犯罪者、白鳥由栄(しらとりよしえ)(本作品中では佐久間)を題材にしたドキュメンタリータッチの作品。
いかにも緻密に題材を調べつくす吉村昭らしい作品だが、あまりにも第三者的で客観的に描いているため、佐久間や看守たちの心情まで入り込めない。吉村作品は、このドキュメンタリ-度というのが、私にとって作品を面白く感じるかどうかのバロメータになるのだが、本作はその度合いが強すぎるため、小説として面白くはない。