本命/ディック・フランシス 1962年 評価:2
アランは父が大富豪で自身が貿易会社支店長。趣味で、競馬の障害騎手としても活躍している。ある大きな障害レースにおいて自分の親友であり、素晴らしい馬に乗り優勝確実だったビルが最後の障害で落馬し、命を落とす。その落馬に不信感をもったアランは単身、調査を始める。
作者自身が一流の障害競馬騎手だったこともあり、レース中の描写は卓越しているが、一般よりはるかに競馬の知識のある私であっても、イギリス、しかも半世紀以上前の障害競走のありようは明確にはイメージできないし、当時の競馬界のシステムは当然古めかしく、その中で行われる不正に絡んだ汚職はどうにもピンとこない。
また、ストーリーが展開していく中で登場する主要人物、アランが恋する富豪の娘ケイトや優秀らしいロッジ警部でさえ、本筋にはほとんど関係してこないため添え物でしかなく、生死をかけるほどの単独調査の割にケイトとのロマンスにうつつを抜かしたり、本当に単独で解決してしまうなど、結局、金持ちのボンボンの探偵遊びでしかないゆるゆるの展開に辟易する。