ソロモンの偽証/宮部みゆき 2012年 評価:4
1990年クリスマスイブに、中学2年生の男子生徒が自分の通う学校の通用門付近で死んでいるのが発見された。警察は校舎屋上からの飛び降り自殺と断定し、事件は解決したものと思われたが、その後、死んだ生徒は自殺ではなく、同じ中学の札付きの不良少年3人組によって殺されたとする告発状が学校内の関係者3人に届く。また、マスコミにも色々な憶測が取り上げられ、翌年の夏、クリスマス当時に自殺した生徒と同じクラスだった生徒たちは、真相を究明するための、生徒たちによる裁判を開廷する。
物語が進むにつれて、登場人物への思い入れが強くなりすぎるためか、そんなことまで考えている奴はいないよ、という人物に昇華させてしまうのがほとんどの宮部作品の特徴であり、私があまり好きになれない理由なのだが、本作の場合は、色々な中学生、しかもかなりいがちなあまりものを考えない登場人物が多く、かなり頻繁に語り部が変わることもあり、その特徴はあまり感じられない。ちょうどバブルが弾けそうな頃の、私も良く知っている時代であるため、描かれる物語の背景はよくわかるし、事件発生から警察や学校、マスコミの過剰な対応、そして学校内裁判と繋がるストーリーは、スピーディかつ丁寧で(これは宮部作品の長所)、登場人物それぞれの人物像がはっきりして、感情移入しやすいし、どんどん先を読み進めたくなる。
ただし、能力の確かな日本の警察が下した自殺の判断はどうしたって中学生の調査で覆すことはないので、ラストは予想通りだし、「真実を知りたい」ことから始まった生徒たちの裁判は、それをほぼ炙り出せはするが、それによって傷ついた人々はラストでそのまま打ち捨てられるだけなので、なんとなく結末に締まりがなくなってしまっている。