盗まれた街/ジャック・フィニィ 1955年 評価:4
カリフォルニアのとある片田舎の町で、知人の様子がおかしいとの相談が頻発する。外見や話す内容は昔のままだが感情がなくなったということだったが、しばらくするとその現象も収まる。しかし、医者であるマイルズは知人の家の地下室で、全く人間の形をしているが指紋や皺などがなく、完成途上の有機体を発見する。異変を感じたマイルズは恋人の家の地下室にも同様に、恋人の姿かたちに形成されつつある有機体を見つけ、さらにそれが球体から徐々に人間の形に変わっていく過程のものであることつきとめる。
これまでに4度も映画化されている、SF小説の傑作。SFといわれるのは、その有機体が宇宙からの浮遊物で、他の惑星への移住のために地球に漂ってきたものだからであるが、なにもそのようにして人間の体を乗っ取った異種生物が極めて凶暴とか、怖ろしい宇宙人が出てくるわけでもない。それでも急速に片田舎の町の住民が変わっていき、四面楚歌になっていく主人公たちの恐怖の描き方は秀逸。ラストの落ちなんかは時代を感じさせる(でも、さもありなんというもの)のでSFというにはちょっと中途半端だが、ホラー小説という見方も加味すれば傑作との評価もうなづける。