悪道/森村誠一 2010年 評価:3


 悪法「生類憐みの令」で有名な徳川五代将軍綱吉は贔屓の大老柳沢邸で能を舞っている最中に倒れ、そのまま絶命してしまう。柳沢はこれまで通りの地位を得ようと、何十年にも亘って育て、囲ってきた綱吉と瓜二つの影役を代役とし、綱吉の最期を看取った医者、影役を育てた奉行、綱吉の付き人など、影役の存在を知る、または気付く可能性のある人間の皆殺しを企てる。その殺人網を切り抜けた伊賀忍者の末裔英次郎は、影奉行の息子と医者の娘を伴い、東北への逃避行に旅立つ。

 舞台を江戸時代に設定した完全なるフィクションであり、英次郎の旅の途中で、スリやら浪人、忍者が仲間に加わっていき、浪人と忍者は八面六臂の活躍をするという、エンターテイメントに徹した作品で、読んでいて爽快、痛快だが、あまりに都合よく運びすぎて深みは感じない。まぁ、面白いことは間違いない吉川栄治文学賞受賞作品。