奇蹟の輝き/リチャード・マシスン 1978年 評価:4


 不慮の交通事故で命を落としたクリス。自らの死をなかなか受け入れられなかった魂のみとなったクリスだったが、夢のような澄みきった楽園で暮らすうちに、やがて死を受け入れる。愛する妻アンが寿命を終えて楽園に来るのを待つクリスのもとに、アンが夫クリスの死に耐え切れず自殺したこと、自殺すると楽園に来ることはできず、魂が地獄を彷徨っているという情報を得る。

 名作(特に映画版)「ある日どこかで」のリチャード・マシスン作品で、1998年に今は亡きロビン・ウィリアムス主演で映画化された。映画版の評価はいまいちらしいが。

 クリスの魂が死を受け入れられないで、最愛の妻アンを思っている全体の1/4あたりまでは、既知感を感じざるを得ない変哲のないラブストーリーかと思っていたのだが、巻末に10ページに及ぶ参考文献を載せている通り、死後の世界の綿密な文献調査に基づいた、魂の世界の描写が鮮烈だ。特に現世のアンを救うのではなく、地獄に行ってしまったアンの魂を救う、そしてその結果は必ずしもクリスを幸せにはしないという結末は、非情ではあるが、ストーリーとして甘すぎることなく、受け入れることができる。

 しかし、本当に死んだあとの魂がここで描かれる楽園に行くのであれば、死というものは恐ろしいものではないのにな。そう信じるだけでもいいのかもしれない。