エイジ/重松清 1999年 評価:3


 新開発地の桜ヶ丘ニュータウンに住む中学2年生のエイジ。思春期の、家族、友達、部活、恋愛などに対する不器用でかつ曖昧な心の揺らぎを描く。山本周五郎賞受賞作。

 私は重松清作品は衝撃的な問題作「疾走」から入ったため、そのあと読んだ中高生を主人公にした作品は、本作も含めなんとなく物足りなさを感じてしまう。確かにいまどきの中高生の使うような言葉遣いや短くてやや支離滅裂な心情描写など、それはそれで確立されたものではあるのだが、本来はもっと迸る感情を劇的に書き込めるはずなのに、なんとなく小出しにこじんまりとまとめてしまっている様で、作品全体としての力強さを感じないのだ。

 また本作の主人公エイジは、中学生犯罪が大きな衝撃となっていた1990年代の中学生を的確に表現しているとは思うのだが、逆に時代が変われば陳腐化を感じざるを得ない。現に今でさえ古さを感じてしまうし、中学生のころは、エイジのようにいちいち色々考えて(どちらかといえば考えるほうだった私でさえ)行動しているわけではなく、理由もなく自分にとって楽しいことをしているのが本当であるだろうし、結局は大人になった作者がいくら言葉遣いや行動を中学生に模倣としても、本当の中学生を描けるはずはなく、何かしっくりしない“違うんじゃないか”というボヤっとした感覚を持ちながら読み進めることになった。

 主人公エイジも魅力がないんだよなぁ。中学生の私だったら、こんな宙ぶらりんで何考えているかわからないようなヤツと友達にならなかっただろう。