宴のあと/三島由紀夫 1960年 評価:3
福沢かづは、その奔放であけっぴろげな活力により、女一代で50代に高級料亭の女将まで成り上がった。彼女は退職政治家である野口に惹かれ、妻に先立たれた彼と結婚。野口は革新党に担がれて、都知事選に立候補。かづは料亭を抵当に入れて、金と心身ともに選挙戦に没頭するが、怒涛の保守党の金と裏工作に破れる。
いくつになっても活動的に動いていないとならないかづと、律儀で生真面目、選挙に敗れて隠居を決め込む野口。この二人がなぜ結婚するまでになったのか、そして必然的に別れることになるまで、三島の硬質で隙のない文章によりつづられる。繊細、詳細に積み上げられた人の心の内外の描写により、一つ一つの行動がとても説得力があり、また、美しく磨き上げられた文章は見事というほかない。あとは話が、語られる人物が自分にとって魅力があるかどうかということになるのだが、その点で評価は3にはなってしまう。