虚ろな十字架/東野圭吾 2014年 評価:3
11年前に小学2年生の一人娘を殺害され、犯人の死刑を勝ち取ったものの、その後心の溝を埋められないまま離婚した中原道正と小夜子。その後はフリーライターとして働いていた小夜子がある晩、通りすがりの老人に殺害される。小夜子の身辺整理を行っていた中原は、彼女の取材対象であった万引き依存症の女性と小夜子殺害の犯人である男の娘婿である仁科史也の間に、ある共通点を見つける。
被害者の心理や加害者の親類の心情を詳細に描写するというのは「手紙」にも似ている。そして本作では、死刑という極刑が果たして被害者、加害者の関係者にどういう影響を及ぼすのか、また、死刑制度の在りようについての課題も提示する。ストーリーにはミステリー的要素もあるが、それはいまいち切れ味がない。また、死刑制度についていろいろ問題提起をしつつ物語が進む割に、ラストは尻切れトンボ的なはっきりしないものであるため、平均的な評価にならざるを得ない。