ゼツメツ少年/重松清 2013年 評価:4
ある小説家のもとに、中学2年生のタケシから「僕たちを助けてください。僕たちはゼツメツしてしまいます。僕たちを小説にしてください」という手紙が届く。その後にもタケシから届く手紙を元に小説家はタケシと小学生の二人を題材とした物語を書き始めた。小説化の創造する物語とタケシの手紙の内容はそれぞれが交錯し、果たしてどれが現実なのかもわからなくなっていく。
作者が良く題材にする、小中学生のいじめを基にした小説で、自身の作品である「きみの友だち」や「ナイフ」、「定年ゴジラ」等の登場人物が出てくる非常に私的な小説ということが出来よう。
作者の得意分野であるいじめが徹底して描かれ、いじめる側、いじめられる側、孤独を感じる子の心境が詳らかに語られる。それらには解決の答えというものはないが、それに関係する人間たちは心という柔軟性のあるものでどうにか受け止めるしかない。心の持ちよう、考え方をどう自分に納得させるか、整理させるかという、この作者の作品には良く見られる内容である。この内容について、今の私には繰り返されても新たな発見ができるというその面に関する心の触れ幅は少ないので、良い小説という域は出ない。