白い人・黄色い人/遠藤周作 1960年 評価:4


 表題の2編のほか、「アデンまで」と「学生」の4編からなる中編集。カトリック教徒であった作者が、「黄色い人」と「学生」では、どうしても感じざるを得なかった人種の壁を、フランス人の登場人物になりきる「白い人」と「学生」では、キリスト教的考え方の中での罪の意識を、人間のどろどろと蠢く感情とともに赤裸々に描いた力作ぞろいである。

 キリスト教徒でないとわからない神への信仰の仕方(主を据えることにより、主からの救い、主が見ているという第3者的存在への依存感情とでもいうべきか)から感ずる矛盾と抗わざるを得ない人間の性(さが)を、例えればドストエフスキーの真逆の方法から、ドストエフスキーと同じく抉るような徹底した描写で表現する。大変重い内容で、信仰に関しての結論というものもないのだが、宗教における矛盾点や人種による差別などを考えさせられる深遠な小説である。