悪魔のような女/ボアロー、ナルスジャック 1955年 評価:4
平凡なセールスマンのラヴィネルは、浮気相手の女医リュシエーヌと共に、保険金目当てに妻のミレイユの殺害を企てる。心理的に苦しみながらもリュシエーヌの主導でミシェルを殺害したラヴィネルであったが、保険金受け取りに必要な死体は翌日には消えてしまい、またその数日後にはミレイユからの手紙が届く。果たしてミレイユは生きているのか、それとも精神を病んだラヴィネルが見る幻なのか。
本作を原作として、1955年と1996年に2度映画化されている(ただし殺されるのは夫であるラヴィネルに変更されている)。主要な登場人物は3名で、それ以外の人間はほとんど絡まないため話は非常にわかりやすい。またストーリー自体も明快である。といって、単純かというとそういうわけではなく、妻殺害後のラヴィネルの心情が、フランスの濃霧に覆われた時期の風景描写と共に重く沈痛に描かれ、独特で幻想的な雰囲気の中で話が展開していく。フランスのミステリーは、確かに例えばアガサ・クリスティのものとは全く雰囲気が違う。