星宿海への道/宮本輝 2003年 評価:3


 タクラマカン砂漠近郊の村から忽然と姿を消した玩具店社員で51歳の雅人。彼の内縁の妻で雅人の子を身篭る千春は新たな人生を構築していく中で、血のつながりのない義弟紀代志は義兄の過去を探るうちに、雅人の、少年時代からあこがれていた、黄河の源流といわれる星宿海への情念を知ることになる。

 以前も感じたことがあるが、宮本輝作品は続けて読むと魅力が半減する。本作は「草原の椅子」の4年後に書かれたものだが、話の内容はともかく、重要なキーワードとなるタクラマカン砂漠やタジク族といったものが一緒なので、既読感を感じてしまう。

 宮本輝は現代には珍しい文学派の作家なのだと思う。本筋に関係のない描写も極めて多く、それはそれで現実的で、時には叙情的にもなるのだが、過ぎるとストーリーを突っ返させることにもなる。それに結末らしい結末もないことが多く、さぁそれからどうなるの?というところで突然終わったりするところも、なんというか川端康成っぽいというか、現代では珍しい作家と感じるのである。そういうものだから、自分にぴったりはまるものははまるのだが、ちょっとずれると平凡に感じてもしまうのだろう。