秘密/東野圭吾 1998年 評価:5

 自動車部品メーカーで働く普通のサラリーマン杉田には妻・直子と11歳の娘・藻奈美がいるが、ある冬の日、直子と藻奈美の2人が乗ったスキーバスが崖から転落し、直子は死去してしまい、藻奈美は奇跡的に助かる。しかし、藻奈美には直子の魂が宿っていた。娘の身体を持ち、妻の心を持った藻奈美(直子)と杉田のその後十数年の生活が主に杉田の視点から描かれる。

 直子の心を持った藻奈美の学生時代の描写がとても丁寧であり、また、身体が適齢期を迎えるに伴う父親の苦悩がとてもリアルだ。そして、女性として心身ともに成熟していく中で、50を越えていく杉田に対する愛情とその後の人生を考えた時に藻奈美(直子)の選んだ手段は、仕方なくも残酷である。最後の最後に明かされる「秘密」(これがよくよく考えると辻褄が合わない気もするのだが・・・)により、杉田自身の中にも結論が飲み込まれるという展開も見事で、元々私はこのようなファンタジー系は好きなのもあるが、5点献上。

 本作は広末涼子、小林薫で映画化されている。広末は嫌いだが、この設定ならガマンできるかな。