出口のない海/横山秀夫 2004年 評価:3
第二次世界大戦の後期、米国に押され始めた日本は、魚雷を改造して操縦席を付け、操縦者もろとも敵船にぶつかる人間魚雷「回天」を開発。かつての甲子園優勝投手で大学でも野球を続けていた並木は、時代の趨勢から海軍に入り、回天操縦者として仕立て上げられていく。
警察や新聞社の内情もので定評のある著者の戦争を扱った異色作。映画化をねらったような(実際、映画化されていることは後で知った)素直で、感動させようという展開がやや鼻につき、得意の分野ではいやらしいところを抉る著者らしくない筆致である。戦時中としては、かなり甘いというか、現代的な男女の感動物語になっており、ちょっとこの設定はないだろうと、普通には読み進められるが、横山秀夫らしくないな、と肩透しを食らった感じ。