告白/湊かなえ 2008年 評価:5
「愛美は死にました。このクラスの生徒に殺されたのです」中学1年生担任でこの三学期で教職を辞めるという森口の衝撃の告白で始まる物語は、ある特定の期間を、犯人である二人の男子生徒、そのうちの一人の母親、友達の女子生徒の5名の告白により、真実と嘘、それぞれの思いを暴いていく。
最近の映画ではよく観られる手法ではあるが、小説でここまで徹底しているのにまず新鮮さがある。そして何より斬新なのが、現代を生きる登場人物たちの赤裸々な心情(嘘も含めて)の吐露だ。森口だけは口頭なのだが、それ以外の4名は書き物として告白を残す。書くということは自分自身を含めて誰かに読まれるということを意識しているということで、そこで必ず嘘が混ぜ込まれる。言いたいことをソリッドに残しつつ、曖昧な嘘がある文章により、真実がもやに煙っているようでそれが返って話の内容を不気味なものにする。
一方、少年法に守られて、人殺しをしても数年で釈放される16歳未満の人間に対し、被害者の家族などがどういう気持ちなのか、それを、こんなに馬鹿正直に書くかというほどの直球勝負での表現には清いものも感じる。確かに森口もやや極端な人間かもしれないが、誰でも同じような考えが頭の片隅にあるはずで、それを率直に文章化しており、不謹慎かもしれないが、そんな森口の言動には爽快さすら感じる。他の主要登場人物も、極端な面があるにせよ、誰でもが持ち、多くが抑えている狂気性をそれぞれのきっかけにより表に出してしまっただけで、一歩間違えば自分もそうなっておかしくなかったという境界線ぎりぎりの人間であって、他人事にできないというところが、この作品を特殊なものにしている気がする。