容疑者Xの献身/東野圭吾 2005年 評価:4


 花岡靖子は娘・美里とアパートで二人で暮らしていた。そのアパートへ靖子の元夫、富樫が居所を突き止め訪ねてきた。しつこくまとわりつく富樫に将来の不安を感じた靖子は、美里とともに衝動的に富樫を殺してしまう。しかし、その気配を隣室で感じていた、天才的な数学者だが外見的にさえず、性格も地味な40代の独り者石神が殺人隠蔽の提案し、それを実行。しかし石神の大学時代の同窓でもあった物理学者湯川は事件に不審なものを感じる。

 大学の准教授という第三者がさえない警察を助けるという構図は、赤川次郎の三毛猫ホームズシリーズやアニメ「名探偵コナン」と同じで現実的ではないが、さすがは東野圭吾で、安っぽさはあまり感じさせないし、そりゃねぇだろうという決定的に稚拙な設定はなく、エンタテイメント作品と割り切ってサクサクと読み進めた。まぁ、面白いけど、深さはないかな、評価は3が妥当かと読み進めて、最後のトリックが暴かれて愕然。いやぁ、なるほどね。これはきれいに読者を騙す一級のミステリーだな、と。ここまで見事だと、構図の既視感はあっても評価は上がる。やはり売れっ子作家だけあって、基本的な現実性は抑えつつ、見事なエンタテイメントに仕上げているなぁと感心。