梟の城/司馬遼太郎 1959年 評価3


 秀吉が太閤となり、世が平和な状態になり隠遁生活をしていた伊賀出身の忍者の達人である重蔵と、同じ伊賀出身の忍者であり重蔵と共に修行に明け暮れたが、今は武士となり禄をもらっていた五平のふたりの対立を中心に、秀吉の凋落とともに秀吉暗殺、秀吉の警護の依頼を受けた伊賀や甲賀の忍者同士の争いや、もはや忍者としての生き方が古いものになってしまった時代での心の移ろいを描いた作品。ストーリー的にはちょっとしたどんでん返しで閉められる。

 司馬遼太郎の初期の長編小説で、直木賞受賞作。映画化も二度された。しかし、いまいち面白くないんだな。その原因は何だろうと思うに、忍者というちょっと常人とは違う精神を持った特殊な人種を扱っている点、そのような極めて硬派な人種を扱っていながら、かなり頻繁にくノ一が絡んできて、強靭なはずの精神が異性に揺れる点、なんでそこで秀吉を殺さないの??という解せないラストにあると思う。