父さんが言いたかったこと/ロナルド・アンソニー 2003年 評価4


 4人の子供を育て上げ、妻に先立たれた83歳の父親ミッキーは独り暮らしをしている家で小火騒ぎを起し、息子たちは介護施設へ入居させることを考えるが、末息子のジェシーが自分の家に引き取る。始めはギクシャクしていた二人だが、ジェシーの恋人マリーナを紹介して以降、ミッキーは、若かりしころ熱愛の末婚約していたジーナの話をジェシーに語り始める。

 ジェシーもマリーナも過去に大恋愛とその破局を経験しているため、お互いなくてはならない凄く良い関係なのだが、将来を決めないで一日一日の積み重ねを継続している。そんな二人に対し、ミッキーは結局は結ばれなかったジーナとの関係を通して何をジェシーに語りたかったのか、というのが焦点である。

 まさに男のロマンス小説というものであり、マリーナ、ジーナという現代的な魅力のある理想の女性を描いて、パートナーの大切さを問うとともに、判り合えなかった父と子の蟠りが解けていく過程も丁寧に追う。確かに良い小説だが、女性には受けない作品だとも思う。お互い様とはいえ、ジェシーとマリーナの関係は割り切ったものだったが、結局マリーナがその関係を破ろうとしたとたん、ジェシーは冷めてしまう。その気持ちはとてもよくわかるのだが、女性から見れば良い気持ちはしないだろう。また、ミッキーは、結局結婚し、間に4人の子供をもうけ、良い母親だったドロシーのことは全く語らない。たとえボケが進行していた(ボケが進むと本当に若い頃の記憶を語り始めるのは実体験として理解するが)としても、若い頃の理想の女性ばかりを描くのはちょっと綺麗に過ぎる話の展開という気もしなくはない。