二都物語/チャールズ・ディケンズ 1859年 評価4
最近、昔読んで良かった小説を繰り返しているが、本作もそのひとつ。
フランス革命を舞台に、旧フランス貴族の血筋のダーニー、その妻であり、無実の罪で18年間フランスの牢獄に入れられていた父を持つルーシー、ルーシーを至上の愛で見守る飲んだ暮れの弁護士カートンの4人を中心に、劇的で激動の人生を描いた娯楽大作。フランス革命黎明期からのフランス国民の描写にも力を入れており(かなり、極端らしいが)、この荒くれた時代との対比が、4人の義理人情的で高尚な関係をうまく際立たせている。
大学時代に読んで、いたく感動した思い出があるが、今読むと、登場人物たちが実は昔から複雑な関係にあったり、うまく最後は大団円になるなど、かなりストーリー的に強引だし、もしこれが映画化されて原作の通りのセリフが語られるとしたら、あざとい印象と無理矢理感動させようという演出で、私にとっては一瞥嘲笑で終わってしまうものになってしまうのだが、登場人物の内面を描く、しかもそこは上手いディケンズの作であるがゆえにすくわれるところはある。
とはいっても、そのような内容だからといって学生時代に名作と思ったことを恥じることはないと感じる。それだけの、物語としての面白さはあるし、自分の信じる道を進む清らかな精神に惹かれたことは、決しておかしなことではない。