ヴェニスに死す/トーマス・マン 1912年 評価2


 地位と名声を得ているドイツの初老の小説家アッシェンバッハは執筆に疲れ、息抜きにヴェニスに旅立つ。そこのホテルで同じく休暇で訪れているポーランド人家族の十代前半の美少年に魅せられ、同じホテルに滞留しつづけるが、かの地で蔓延し始めたコレラに感染し、そのまま死んでしまう。

 内容がこのように単純で、小説自体短いものであるのだが、それを非常に格調高く、悪く言えば回りくどく、難しい表現を使って遅々と進展して行く感じで、はっきりいって、言葉が脳に入っていかないし、当然刷り込まれても行かない。確かに張り詰めて隙がないある意味凄い文章ではあるのだが、単純な話を哲学的に(特にギリシャ神話の引用が多い)こねくり回している感じで、私にとって映画評価をするときに芸術的過ぎて、面白みが無いものの評価が上がらないのと同様、本作も芸術的ではあるのだろうが、とても面白いとは思えず、評価は上がらないし、人にも薦められない。