模倣犯/宮部みゆき 2001年 評価4


 若い女性をねらった連続殺人事件が発生。犯人は警察や遺族、マスコミらを挑発するように、遺体の一部、遺留品を目に付くように送りつけるほか、テレビ番組へ声の出演をするようになる。しかし、栃木県で二人組みの男が事故で死亡し、そのトランクから死体が発見され、その後の調べでこの二人組みが一連の事件の犯人であると強い容疑がかけられるが・・・

 宮部作品は、事件そのものよりも、被害者の肉親や事件関係者の関わりを丁寧に書き、それがとても現代的で真実味があるのが特徴である(小説界のユーミンと勝手に思っている)。本作も、関係者たちの描写がとても丁寧で、単なるミステリーに終わらせない奥深さがある。

 一方、文庫本で約2500ページに及ぶ大作であり、その事件以外の部分に紙数を割きすぎている嫌いもある。事件は全体の1/4で全貌が見え、最後の1/5で新たな展開が再開されるのだが、その間の約全体の半分が、最初の1/4で起こった事件を同じ時系列でさまざまな視点から繰り返し語られる。それがあまりに丁寧で幅広く、人間模様も緻密に表現されているのだが、一方、手を広げすぎた分、なんとなく宙ぶらりんで終わってしまう登場人物もいれば、こんなに饒舌でよく考えている人物だったのか(特に被害者第一発見者の高校生)など、物語の進行に勢いがあれば特に不審に思わないところに気がついてしまうのも事実である。確かに力のこもった大作であるが、ミステリーとしては大事な「勢い」が殺がれてしまっている。