そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティ 1939年 評価5
イギリスの孤島、インディアン島に召使二人を含む10人が招待された。一日目の夜、蓄音機から、過去に犯罪としては成立しないが、関係者を死に至らしめた10人それぞれの罪状が読み上げられ、それから、古くから伝わる童話の通り、一人づつ殺されていく。果たして犯人は10人の中にいるのか、それとも他に島に隠れているものがいるのか。
本作は中学時代に読み、そのミステリーとしての出来の良さに感嘆した作品。4時間もあれば読める短いものだが、アガサ・クリスティの傑作として挙げる人が多いのもうなずける面白さである。
短い作品で、登場人物も多いのだが、その短い中でも各人の性格付けを端的に、的確に行っており、また殺人が進むにつれ、他人を見る目、考え方の描写も確実であり、それでいて、ミステリーとしても第一級の内容で(多少雑なところがあるにしても)、約30年振りとはいえ読んだのは二度目だが、どんどん読み進めたいという気持ちを抑えられない、非常に洗練された出来となっている。