ジョニーは戦場に行った/ダルトン・トランボ 1939年 評価4
第一次世界大戦における戦闘により、顔のうち目から下の部分を抉り取られ、視覚、聴覚、味覚をすべて失ったジョニーは、病院のベットの上で、今度は壊疽により両腕、両脚を切断される。意識は正常である彼に残ったのは触覚のみであったが、唯一のコンタクト手段である頭の動きだけで、自分を表現することを試みる。
ジョニーの頭の中では、過去の思い出が走馬灯のように駆け巡る。しかしそれはもう決して感じることの出来ない感覚なのである。家族、恋人との別れ、青春の思い出。それらの追想がとてもビビットであり、だからこそ今、そこで寝ているジョニーが自分が誰なのか、どこから来たのかさえ誰にもわかってもらえない究極の孤独感が引き立つし、また、やっとのことで、自分の意志を伝えられることになった際の、戦争の無意味さを延々と頭を動かし伝えるジョニーと、それに対する医師の返答がもの凄い虚脱感を感じさせる。完全な反戦内容で、作品発表の時代を考えると衝撃的である。このためもあり、トランボはいわゆるハリウッドの“赤狩り”に合い、しばらく不遇の時代をすごすことになった。
本作はトランボ自身が監督、脚本を務め、71年に映画化された。映画版は1988年に観ており、今回読んだ原作と同じような衝撃的な内容である。なお、彼は映画に縁が深く、「パピヨン」「栄光への脱出」「スパルタカス」といった男くさい映画の脚本だけでなく、「ローマの休日」の脚本も書いているとは驚きだ。