ホテル・ニューハンプシャー/ジョン・アーヴィング 1981年 評価4
ニューハンプシャーで育ったジョンを狂言師に、ホモだが後にエージェントとして家族を支える兄のフランク、レイプされたことで心に傷を負うが自分自身で克服し、後に有名女優となる、ジョンと愛し合ってもいる姉のフラニー、小人症だが一世一代の自伝的ベストセラーを書き、家族を金銭面で救った妹のリリー、難聴のまま幼くして母とともに飛行機事故でなくなってしまう弟のエッグ。この5兄弟とウィン、メアリー両親を中心にした、結果として時代時代で計3箇所のホテルを経営することになる家族の波乱万丈の物語。
「人生はお伽話」というフレーズが良く出てくるように、時にはありえないようなエピソードもたくさんあるのだが、ことさらその悲劇性や喜劇性を強調するわけでもなく、また、40歳を超えたジョンの回想の形式で物語は語られるのだが、当然少年、青年期の思い出というのは強烈なものや自分自身の感性に触れたものが残るものなので、現実味がないとか違和感は私はほとんど感じなかった。結果として第三次ホテル・ニューハンプシャーの時代ではハッピーエンドに終わり、上手く行き過ぎ感はあるにしても、登場人物がそれぞれの苦悩を抱えながら、自分自身を変え、又は家族・知人と助け合いながら克服または上手く付き合うようになっていく内容が、厳しい人生への対処の仕方を教えてくれているようである。
作者は「スローターハウス5」を書いたカート・ヴォネガットと通じるところがあるということだ。同じフレーズの繰り返し、達観したような人生観。個人的に先の人生が見通せない今の時期、このような内容の小説は、私の将来感に何かヒントを与えてくれそうな気がする。