震度0/横山秀夫 2005年 評価4


 阪神・淡路大震災の日、N県警の警務課長であり、人望も厚い不破が姿を消した。県警全体の失態につながるこの件は、本部長および5人のキャリア、準キャリア、ノンキャリア部長の間で、それぞれの部の主導権争い、各部長の出世争い、過去の事件との裏舞台のつながりなどの様々な思惑の中で翻弄されていく。

 事件は不破の妻の思わぬ告白で収束に向かうのだが、本作は事件をめぐるサスペンスと言うより、警察内部のどろどろした人間関係を描くことに主眼がおかれている。それでもさすがはベストセラー作家であり、ぐいぐい引き込まれる面白さなのだが、登場する警察官がほとんど本来のあるべき警察の姿ではなく、自分の思惑を考えながら仕事をしており、それが事実に近いのかもしれないが、なんとなく嫌なものに触れてしまった感を持ってしまう。

 また、他の横山秀夫の作品にもみられるとおり、本作もわずかでも光明を示した終わり方をするのだが、そうでない場面が長すぎるので、なんとなくとってつけた感を感じる。